【おいしいコラム】長塚京三主演『敵』
長塚京三主演『敵』が「おいしい映画祭」に登場。「『敵』はおいしいにあり?」の謎を公開していきます!
日本文学界の巨匠・筒井康隆の同名小説を映画化。主演をつとめるのは12年ぶりの映画主演となる長塚京三、わきを固めるのは今ノリにノっている瀧内公美や河合優実です。
ストーリーは、元大学教授が、自ら決めたXデー、人生の終焉に向かって暮らす様子を淡々と描いていきます。しかしある出来事をきっかけに、突如、主人公は死への恐怖に導かれ、欲望渦巻く深い闇へと引き込まれていくのです。
でもなぜ、『おいしい映画祭』で上映なのか、といえば、長塚京三演じる77歳の主人公、渡辺儀助が毎日こだわりの食事を作り、食べるシーンがふんだんに登場するからなのです。
モノクロ映画なのに、湯気が立ち上り、色、味、においまで、あふれ出してきます。このおいしいシーンを担当されたのが人気フードコーディネーターの飯島奈美さん。死へと向かうストーリーではありますが、映画の中では朝からとてもおいしい料理が登場します。まさにモーニングルーティン。高級の分厚いハムでつくるハムエッグのジュッという音が、一気に覚醒してくれます。几帳面で潔癖な元大学教授らしく、「正しい目玉焼きの作り方」のようで面白いです。翌朝は、絶対にハムエッグを食べたくなります(笑)。
食事の変化がその人の人生の終焉を表している― そんな深いことにまで思いを馳せられる映画『敵』。主人公の丁寧な自炊生活では、こだわった食事描写が続き、客を招いてのごちそうなども出てきます。自ら串を打って作る焼き鳥シーンは、もう香ばしさも漂って、日本酒が飲みたくなるほどです(笑)。料理をする姿にもその人の人となりが表れていたり、そんな視点から見ても『敵は』楽しめる映画。見終わった後、今後の人生までも考えてしまう深い映画です!
この話題作の上映と、さらには監吉田大八監督と飯島奈美さんのトークまで聞けるのは「おいしい映画祭」ならでは!ぜひ劇場でご覧ください!
(黒田直美)