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おいしい映画祭2024レポート後編

今年で3回目を迎える「おいしい映画祭2024」
後編では2日目を中心にレポート

朝から会場の熱気に包まれ「おいしい映画祭2024」2日目がスタート

オープニングを飾ったのは2024年5月に劇場公開されたばかりの映画『おいしい給食 Road to イカメシ』。市原隼人さん主演の人気シリーズ最新作です。

1989年の冬、舞台は函館の忍川中学。給食マニアの教師・甘利田先生(市原隼人)の新たな給食バトル、そして「おいしい給食」を守るための闘いが繰り広げられます。

上映後には、綾部真弥監督、水野勝さん(『劇場版 おいしい給食 Final Battle』に出演)、羽田野栞さん(等々力町長の秘書役)、そしてサプライズで榎本桜さん(米島先生役)が登壇。会場からは温かな拍手が沸き起こりました。

水野勝さん、綾部真弥監督、羽田野栞さん、榎本桜さん

「おいしい給食」シリーズ継続の裏に隠された秘話
コロナ禍がもたらした苦悩と映画のチカラ

劇場版第3弾となる『おいしい給食 Road to イカメシ』も公開され人気シリーズへと成長した「おいしい給食」ですが、当初は水野さんも出演する『劇場版 おいしい給食 Final Battle』でシリーズを完結させる予定だったそう。

「2019年に撮影し、2020年3月に公開したのですが、コロナ禍で舞台挨拶も中止、上映も途中で打ち切りになってしまって…」と、当時の苦しい状況を振り返った綾部真弥監督。

しかし、そんな中でも一館だけ再上映してくれた映画館があり、監督自身も観客として初日に鑑賞したそう。「そこで、みんなが笑ったり泣いたりしている姿を見て、映画はみんなで観たほうがより面白く感じられることを実感しました。それで市原くんとも話をして『~卒業』に繋がりました。『~卒業』も「これが最後!」と思ってやってきたんですけど、結局『~Road to イカメシ』へと繋がっていったんです」。

市原隼人さんの役者魂に水野さんも…

『~Final Battle』に教育実習生の佐野先生として出演した水野勝さんは、「暑い夏に、武田玲奈さん(御園先生役)たちと一緒に和気あいあいと撮影したのを覚えています」とコメント。主演の市原さんについては、「カメラが回っていないところでも、ずっと台詞を反復されていて、常に甘利田先生としていたのが強く印象的でした」と、その役者魂に感化された様子。

本作で、俳優デビューを飾った羽田野さんは、「お芝居もはじめてで緊張しましたが、温かい現場で安心しました」と笑顔をみせると、石黒賢さんとの共演シーンを振り返り、「函館の風が強い港町での撮影で『危ない時は自分を守って下さいね』と気遣っていただきました」と心温まるエピソードを披露してくれました。

ちなみに、綾部監督によると、羽田野さんのプロフィールは相当インパクトがあったそうです。

榎本桜さん、まさかの飛び入り参加で…

今回、サプライズで登壇することになった榎本桜さん。自身が企画、プロデュース、出演する『マンチの犬 ~アンパンとカツ丼~』が一般コンペティションの優秀賞に選ばれたため、たまたま会場で綾部監督と再会。トークの登壇に繋がりました。

実は本作への出演の経緯もかなりユニーク。「岩淵プロデューサーと知り合いだった縁で、粒來ケン役のオーディションに甘利田先生として市原さんの代理で参加したんです。甘利田カラーの青いジャケットを着て、メガネをかけて…少しでも印象に残ればと思っていたら、そこで出演が決まりました」と榎本さん。

すると水野さんが「ハリソン・フォードもそれで決まりましたよね!」と撮影現場で大工仕事をしていたハリソン・フォードがジョージ・ルーカスの目にとまったエピソードを引き合いに出す場面も。その言葉に「じゃあ、僕ハリソン・フォード?(笑)」と、榎本さんは満面の笑みを浮かべました。

その粒來ケン役のオーディションで役を射止めたのが、田澤泰粋(たいき)さん。榎本さんも「オーディションでずば抜けて「ケン」だった!」と絶賛すると、綾部監督も「ケンは泰粋くんしかいない!」と感じたことを明かしました。

市原さんの進化し続ける演技
「彼の映画を愛するチカラに勇気をもらっています」と監督

シリーズを重ねるごとに進化する甘利田先生のリアクションについて、綾部監督は「市原さんは、台本を膨らませて膨らませて、あの甘利田を作り上げていくんです。毎回、雑巾を絞るように、絞って絞って、もう一滴も出ないところから、さらに新しい表現を絞り出す。本当にすごい役者です」と、最大の賛辞を送ります。

そして「市原くんの映画を愛するチカラに、毎回勇気をもらっています」とも。その言葉に、ふたりの強い信頼関係が垣間見えました。

給食談義で盛り上がり!ビン牛乳に冷凍ミカン…懐かしの

話題は給食の思い出話へと移り、水野さんは「五目うどんが好きでした。ソフト麺は4分割して食べる派です」と話すと、羽田野さんは「白身魚のアーモンドフライ。あのカリカリが大好きで」、榎本さんは「冷凍ミカン!凍ってると味がしないし、温めすぎるとグチャグチャになるし…いつ食べるかいつも悩んでました(笑)」と、エピソードをそれぞれ披露。

綾部監督は「思い出といえばビン牛乳の蓋。うまく蓋が開けられない時もあって…。それで本作でもビン牛乳を採用しています。市原くんがビン牛乳の蓋を開けるシーンは、その時次第。だから成功するか失敗するかで演技が変わるんです」と裏話も飛びだしました。

神野ゴウ復活の裏に監督の葛藤あり
彼が現場に来たら盆や正月のような雰囲気に

実は、綾部監督は当初『~Road to イカメシ』に「卒業」した神野ゴウを登場させることには反対だったそうです。「でも、いろいろ準備を進めるうちに、観客は神野ゴウに会いたがっているんじゃないかと思うようになって…」と、心境に変化が生じたことを明かし、ファンの期待に応える形で神野ゴウの出演シーンが復活。

すると、撮影現場は大盛りあがり。「彼が現場に来ると、スタッフも市原くんも喜んでいました。田澤くんもいたので、3人でキャッチボールをして、スタッフも『大きくなったね~』と親戚の子状態。まるでお正月やお盆のような、とても温かい雰囲気でした」と綾部監督が振り返りました。

そしてこんな裏話も「神野と甘利田のシーンは、台本には『涙を流す』なんて書いてないんです。でも、自然と涙がこぼれて。愛先生(大原優乃)との関係を引きずっているという設定も重なってとても良いシーンになったと思います」。

終始笑いの絶えないトークショーはあっという間に終了に。抽選会も大いに盛り上がり、朝から「おいしい」トークで会場を包み込んでいました。

熱気広がる会場で行われた
コンペティション一般の部

おいしい映画祭一般コンペティション

続いてプログラムは、一般の部のコンペティション上映へ 続きはこちら

一般の部 コンペティション 結果

優秀賞 5作品
『幸福指数』西井舞監督
『マンチの犬〜アンパンとカツ丼〜』賀々贒三監督
『今日のスイーツに感謝を〜暮高男子スイーツ部〜』高橋雅紀監督
『MADE IN JAPAN』浮辺奈生子監督
『おべんとう』板橋基之監督

まるは食堂賞『おべんとう』の板橋基之監督
にじ協同組合賞『今日のスイーツに感謝を〜暮高男子スイーツ部〜』高橋雅紀監督
観客賞『MADE IN JAPAN』浮辺奈生子監督
グランプリ『幸福指数』西井舞監督

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あの味仙の「エイリアン」を完食?
主演 磯部圭祐さんがみせた役者魂

審査員がコンペティションの審査に入る中、会場で上映されたのは『台湾ラーメンリハーサル』。第2回目の「おいしい映画祭」で審査員特別賞(グランプリ)を受賞した山口晃三朗監督の新作です。

主役の座を狙う劇団員の奮闘劇を映しだす作品で、磯部圭佑さんが主演。主役となるための条件は心を揺さぶる演技表現を、『台湾ラーメンを食べ、飲み干す』という行為を通して伝えること。果たして劇団員・山崎孝志は、その真髄を体現し心揺さぶる演技をすることができるのか?

トークには、山口晃三朗監督、磯部圭佑さん、主題歌「杏仁ソフト」を歌う甘党男子のリーダーで出演もしている二ノ宮一馬さんが登場。舞台となった矢場味仙の魅力や裏側を語りました。

劇団員・山崎孝志役を体当たりで熱演した主演の磯部さんは、撮影が始まるまで台湾ラーメンを食べたことがなかったのだとか「初めて食べた時は本当に辛くて、でも辛さの中に旨味があって、どんどん食べたくなりました」と台湾ラーメンの魅力を語ります。

撮影の舞台になったのが、矢場味仙。その矢場味仙には辛さに段階があり「アメリカン→ノーマル→イタリアン→アフリカン→エイリアン」とどんどん辛くなっていくのですが、磯部さんは実際にエイリアンも食べたのだとか。「リアリティを出すために、予定にはなかった『エイリアン』を食べました。最初は演技で辛さを表現していたのですが、それではリアリティが足りないと思って…」

山口監督も「さすがにエイリアンはきついかなと思って、演技で辛さを表現する予定だったのですが、現場で磯部さんのテンションがどんどん上がっていって、ずっと笑っていたのでダメもとで『エイリアン行けます?』って聞いたらエヘヘヘって(笑)」と、当時の状況を語りました。

店員役として、そのやりとりを間近で見ていたという二ノ宮さんは「いくらおいしくても辛いもの「だけ」をずっと食べ続けるのは大変だと思うんです。それを磯部くんは、台湾ラーメン食べて汗をかきながら、牛乳を飲んで、また食べてを繰り返してて、牛乳と台湾ラーメンを交互に食べてる姿を見て「これはすごいな」と、台詞にもあるけど感動しました」と語りました。

会場には、劇中劇で恋人の父親役を演じた高瀬英竹さんの姿も、完成した作品をこの日初めて観たという高瀬さんは「音楽と編集素晴らしさに感動しました」と感想を寄せました。

「撮影は一瞬だったけど、リハーサルを重ねて本作を撮りあげた」と明かす山口監督は「少しでも台湾ラーメンに興味を持っていただけたら嬉しいです。ぜひ矢場味仙さんで味わってください」とPR

磯部さんも「一緒に台湾ラーメン食べましょう」と笑顔をみせると、二ノ宮さんが「矢場味仙さんには甘党男子が歌う主題歌にもなっている「杏仁ソフト」があります。デザートにぜひ」と締めくくりました。

トークのあとには、甘党男子によるパフォーマンスも行われ、会場のボルテージも一気に急上昇。みなさんとても楽しそうでした。

ラストは塚本連平監督作『今日も嫌がらせ弁当』
松井玲奈さんが語る監督も忘れていた納豆秘話とは?

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

そして2日間に渡って行われた「おいしい映画祭」を締めくくる作品は、八丈島を舞台に、不器用な母と反抗期な娘が繰り広げる「キャラ弁」バトル『今日も嫌がらせ弁当』。最新作『35年目のラブレター』の公開が控える塚本連平監督のハートフルドラマです。

主演は篠原涼子さんと芳根京子さん。篠原さんのしてやった顔と芳根さんの反抗期特有のなんともいえない不機嫌顔がたくさん見られる一作。個人的には佐藤寛太扮する同級生・達雄に対する双葉(芳根)の表情がたまらなく愛おしいのですが、それをこうして大スクリーンで観られるのも映画祭の醍醐味ですね。ラストに向かって、ふたりがどうなっていくのか…。まだ観てない方もぜひ、配信で楽しんで欲しいです。

さて、上映前には塚本連平監督と松井玲奈さんが登壇し、トークや抽選会も行われました。松井玲奈さんは本作で芳根さん演じる双葉の姉・若葉を演じています。そんな松井さんが今でも時々思い出すのが、監督がこだわり何度もテイクを重ねた納豆をかき混ぜるシーン。「ねぎをぶっきって、醤油とぶん混ぜる~。これぞ日本の朝食」といいながら納豆をガシガシかき混ぜるのですが、台詞ではなく混ぜ方がポイントだったようで、監督からは「もっと楽しそうに!」という演出があったそうです。塚本監督は「え?覚えてない?そんなに回した?」ということでしたが、本作では少し変わった演出も試していたという裏話も飛び出しました。

塚本連平監督と松井玲奈さんのトークの続きは レポート前編 をお読みください。

今年も「おいしい」ドラマが、2日間あちらこちらで繰り広げられた「おいしい映画祭」来年はもっとパワーアップして帰って来る予定なので、興味を持った方はぜひサポートいただけると嬉しいです。

そして、年明けには2025年のコンペティション作品の募集が始まるとのこと。我こそはというクリエーターの方、冬休みにぜひ企画を練って「おいしい」映画撮って応募して下さいね~。

それでは、来年またお会いしましょう。

前編を読む

後編に続く

 





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